アクサの興味深さ
金融に関する、ちょっとした「ものの見方」を身につける。
これだけで、あなたの5年後に決定的な違いが生じます。
1992年から97年。
この5年間で、ロシアの経済規模は、およそ四割から5割縮小したと言われています(日本では数年前、成長率がマイナスー〜ニパーセントになっただけで大変な騒ぎになりました)。
これから日本はますます少子高齢化社会に突入していきます。
国の財政や年金制度は大丈夫なのでしょうか。
私たちの暮らしはどうなるのでしょうか。
私たちは、今一度ここで、マーケットの仕組み、資本主義の基本的な考え方に目を向けてみる必要がありそうです。
自分の生活は自分で守る。
基本です。
人任せにしては大変なことになるのです。
1人1人が、自分の利益を考えることで、結果として、「神の手」が働き、社会全体が豊かになる。
資本主義の根底にあるのは、十八世紀の経済学者Aダム.Sミス以来のこうした考え方でした。
かつて私は、NK銀行で水俣病問題の金融面からの解決に向けて奔走した後、1990年代後半にJPMガンやメリルリンチ、リーマンーブラザーズなどの米国の投資銀行に移りました。
投資銀行とは政府や企業を主たる顧客として、企業の買収・合併、資金調達などのアドバイスや株式・社債の引受・販売業務を行なう一種の証券会社です。
天下国家を論ずることの好きな金融の「守旧派」からうって変わって、弱肉強食の欧米型市場主義の真只中へと身を投じたのです。
かつて、K銀で水俣病に関する金融支援に係わっていた時は、企業(Cソ)、県(熊本県)国(当時の環境庁、大蔵省、自治省、通産省)などとの調整的な実務が仕事の多くを占めていました。
閣議了解や閣議決定のベースとなる文言を巡って、夜中の2時、3時まで 議論することもよくありました。
それでも、自分の行なっていることが、「公」の役に立 っているとの自負心に支えられ、夜を徹した仕事を続けることができたのだと思います。
Mガンやメリルリンチなどの投資銀行では、そういった日本的な「半官半民的」な仕事 から一転して、日本駐在のマネーシングーディレクターとして、最も資本主義的な業務といわれる「企業の買収や合併」などの現場に立ち会ってきました。
戦後の高度成長を演出した、ある意味では、「日本的な会社の最右翼」であったNK銀行から、「資本主義、市場主義の権化」のような米国の投資銀行へiはからずも私は、2つのまったく違った世界を経験し、しかもまったく対極的な仕事をするようになったのです。実際に働いてみた実感としては、日本的な会社のほうがはるかに居心地の良い世界でした。
何よりも、まず、同じ職場で働いている先輩、同僚、後輩たちが、自分と同じような「人種」でした。
みんな同じような教育を受けてきて、同じような考え方をしていました。
仕事が終わって、飲みに行って騒いだり、週末ゴルフをして遊んだり、心地良い楽しさを満喫できる毎日でした。
一方、投資銀行では、周りにいる人間で、自分と同質と感じられる人間はほとんどいませんでした。
最初に入った投資銀行では、上司はイギリス人でしたし、部下にはギリシャ系アルゼンチン人、ドイツ人など、国籍だけでもさまざまです。
一緒に働くこととなったインド人は、「脳の構造がどうなっているのだろう」と思わずにいられない「数字の天才」でした。
明け方の4時、5時まで毎日がんばっている大学出たての日本人の女性もおりました。
そこでは、日本的な同質感、心地良さはあまりなく、ピンと張り詰めたような緊張感が毎日を支配していました。
ところで、「市場主義」の名の下に、社会がどんどんアメリカ的になっていく最近の日本の風潮に対して、疑問を持っている方も多いと思います。
1人1人が自分の利益を考えるだけで、社会としてうまくいくのだろうか。
やはり、きちんとした「交通整理」、規制が必要なのではないか。
「公」のことを考える政府の役割にもっと期待すべきではないか。
何よりも昔の社会は今のようにギスギスしていなくて、ぬるま湯のように温かく、ぬくもりが感じられたではないか。
欧米の弱肉強食的社会は狩猟民族の社会だ。
日本はもともと、のどかな農耕民族的社会であり、これからも自らの創意工夫により、日本的「資本主義」を創造していくことができるのではないだろうか。
このような疑問を持たれる方もいらっしゃるはずです。
ながら、現実には、お隣の中国では、比較的安価な労働力を挺子に、圧倒的パワーの韓国で、経済成長をどんどん加速させてきています。
この間、日本では、不振企業に対する金融支援、政府による銀行への公的資金投入などで、なんとか国全体が金融危機に陥るのを防ぎましたが、「ツケ」は国債残高四89兆円強という途方もない現実として跳ね返ってきました。
年金債務や特殊法人問題などの制度の綻びも目立ってきました。
厳しい現実を考えますと、もはや、私たちは、過去の郷愁に戻りたくても、戻りえないのかもしれません。
25年前、私は、米国スタンフォード大学のビジネスースクールでMBA(経営学修士)を取得しました。
スタンフォードでは、Sャープ(1990年にノーベル賞受賞)と、Mドナルドという2人の看板教授から、金融を学びました。
Sャープ教授は、株式市場には、多くのアナリストたちがいて、常に市場を見ているのだから、基本的には市場はきわめて効率的で、完全市場に近いと考えました。
この前提に立って、ポートフォリオの理論を確立していきました。
一方で、Mドナルド教授は、市場はすでに効率的かもしれないが、多くのアナリストたちが、非効率的なところを見づけようとしてきたことの結果である。
したがって分析力をより高めていけば、これからも市場平均以上のリターンを上げうることが可能であると考えました。
立場の違う2人の教授でしたが、根底に流れる考え方は一緒でした。
マーケットが効率的であることで、資金が効率的に使われる。
たとえば、株価が効率的に決まることで株式市場を通じて、企業に提供される資金が効率的に配分される。
歪んだ市場では、資金が本来行くべきところ(成長性の高いところ、資金が効率的に使われるところ)に行くことができない。
その結果、「カネ」「モノ」「ヒト」が効率的に配分されなくなり、経済全体として目一杯成長することができなくなってしまう。
根底にあるのは、そういった考え方なのです。
私たちの「日本的システム」は、いつしか、この資本主義の大原則を忘れてしまったのかもしれません。
市場がうまく機能しきれないケース(経済学では『市場の失敗』と言っています)に目が行きすぎて、市場本来の機能を損ねてしまっていることはないでしょうか。
あるいは、全体の「パイ」の「配分」のところにのみ、みんなの関心が移ってしまっているのかもしれません。
居心地が良いと感じていた「ぬるま湯」は、実は沈み行くタイタニック号の温室だったのかもしれません。
効率的な資金配分、資源配分が行なわれることにより、パイは全体としてもっと大きくなることができるのです。
私たちは、市場が本来持っている「力」、Aダム.Sミスの言う「神の手」を、もっと信用してもよいのではないでしょうか。
もちろん、「わがままに自分の利益を追求していく」ということの裏側には、2人1人が自己責任のルールをしっかり守る」ということが隠されています。
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